産休・育休中の社会保険料免除や出産手当金、育児休業給付金等についてまとめました。
健康保険の被保険者及びその被扶養者が出産したときに健康保険に申請することで、1児につき42万円、双子以上の場合は42万円×人数分が支給されます。
※健康保険組合は付加給付が加算されるところもあります。
※産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は40.4万円
(産科医療保障制度とは:病院等が加入する制度で、分娩時に万一、何らかの理由で重度の脳性麻痺になった場合に子どもと家族の経済的負担を補償する制度)
【要件】
妊娠4ヶ月(85日)以上で出産したこと。早産、死産、流産、人工妊娠中絶も支給対象。
【直接支払制度】
本人に代わり、医療機関が健康保険に出産費用を請求する制度。出産育児一時金は健康保険から医療機関に直接支払われ、本人が窓口で支払うのは差額のみとなります。出産前に医療機関に直接支払制度の利用を申し出ることで利用できます。
(例)出産費用が50万円の場合
出産費用(50万円)-出産育児一時金(42万円)=窓口支払額(8万円)
直接支払制度を希望しない場合は、窓口で出産費用全額を支払った後、健康保険に申請することで本人が出産育児一時金を受け取ることが出来ます。
健康保険の被保険者が出産のため仕事を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(双子以上の妊娠の場合98日)から、出産の翌日以後56日目までの間について、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。
【支給額】
1日あたりの額=支給開始日以前12か月の平均標準報酬月額÷30日×2/3
(例)平均標準報酬月額26万円、産前(42日)+産後(56日)休んだ場合
26万円÷30日×2/3=5,778円(日額)
5,778円×(42日+56日)=566,244円
【申請】
申請書には医師の証明、事業主の証明が必要なため、産後休業終了後に産前・産後休業の期間についてまとめて申請を行います。
ただし、都度証明をもらうことで複数回に分けて申請を行うことも可能です。(医師の証明は1回目の申請が出産後で、証明により出産日の確認が出来た場合には2回目以降は不要です。)
産前産後休業期間の健康保険・厚生年金保険料は本人、会社負担の両方が免除されます。
【保険料が免除される期間】
産休開始月~産休終了日の翌日が属する月の前月まで
(例)産前産後休業期間:3月5日~6月10日の場合
免除されるのは 3月~5月分保険料
産休終了日の翌日(6月11日)が属する月の前月=5月分まで免除
育児・介護休業法による満3歳未満の子の育児ための育児休業等期間について、健康保険・厚生年金保険料は、産休中と同様に本人と会社負担の両方が免除されます。
育休中に賞与の支給があった場合には、賞与についての保険料も免除されます。
※育児休業中の保険料免除の要件は、令和4年10月から変更されます。
【保険料が免除される期間】
育児休業開始月~育児休業終了日の翌日が属する月の前月まで
※ただし、育児休業開始日と終了日が同月内の場合は以下の通りです。
①終了日がその月の末日・・・・免除される
②終了日がその月の末日以外の日・・・免除されない
育児休業給付金は、1歳(パパママ育休プラスの場合は1歳2か月、保育所に入所出来ない等の場合は1歳6か月又は2歳)未満の子を養育するために育児休業を取得した雇用保険被保険者が一定の要件を満たした時に支給されます。
支給額は1か月あたり、原則として休業開始時賃金日額×30日×67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)です。
育児休業終了日に満3歳未満の子を養育している被保険者は、随時改定の要件に該当しなくても、育児休業終了後3ヶ月の報酬の平均額に基づき、4か月目の標準報酬から変更することが可能です。
【要件】
・これまでの標準報酬から1等級以上の差があること
・育児休業終了後3ヶ月のうち、支払い基礎日数が17日以上の月があること(パートは15日以上)
子どもが3歳までの間に標準報酬月額が下がった場合に、被保険者が申し出ることで、子どもが生まれる前月の標準報酬月額で保険料を納めたとみなして計算された年金を将来受け取ることができます。
子育てのための短時間勤務のみならず、残業を減らしたことで給与が下がった場合など、理由を問わず標準報酬月額が下がった場合に利用できる制度です。
申出日の前の期間について、2年間はさかのぼってみなし措置の適用を受けることが出来ます。
特定社会保険労務士
森 順子